そーたのにっき

おもったことなど

面白かったマンガ②「銀の匙」

 荒川弘って女性だったんだね、っていうと今更何言ってんだと言われますが、実際その時の衝撃はすごかった。あの「ハガレン」を書いた人だぞ。本人は農家出身なので自画像であるホルスタインといえばメスだろうが!と言っていたらしいが。

少年心をくすぐる大ヒットダークファンタジー鋼の錬金術師」、その完結後に荒川先生がどんなマンガかとワクワクしていたら日常物(?)だった。

 

 「ハガレン」は幼稚園を卒園するかどうかのころから読んでて、完結したのは高校生の時だった気がする。錬金術を用いて敵と戦っていく王道少年マンガかと思いきや、倫理感、死生観、人種、宗教、科学など、いろいろなテーマを作品にちりばめていて、幼い私自身もかなり影響を受けたと思う。

 さて、今回のマンガ感想はその荒川先生の次回作「銀の匙」である。高校生の時に「ハガレン」の次回作だ~と思って読んだらなんだこりゃ状態になって敬遠してずっと読んでなかったのを10年越しくらいに読み直した。TSUTAYAで全巻まるまるレンタルです。大人になるってこういうことよね。

 

 あらすじとしては、北海道のとある進学校の優等生である主人公が、将来の進路や人間関係に疲れた末、全く関係のない農業大学に入学した結果、少し変わった仲間やその周りを取り巻く動物たちと触れ合っていくことで自分を見つめ直していく物語だ。

 ギャグがテンポよくストーリーも面白いし、素直に勉強になる話がとても多い。これは農家出身の荒川先生ならではだと思う。後半にかけての展開もみごとで、農業・工業・商業・経営について学べるような内容になっている。高校生の時に読んでたら将来目指しているもの変わってたかもしれない。

 

 もう一つの魅力としては、とても美味しそうな食材・料理。もちろん農業大学なので育てている動物を食べなければいけなかったり、ニワトリの総排泄腔から鶏卵が出てくるのを目の当たりにした後に卵かけご飯を食べたりなど、食育的な要素も描写されているが、なにせその食材や料理がとてもおいしそうだ。

 

 また、主人公がことあるごとに食材を口にしては的確なグルメレポを無意識に行っているのだが、物語が進むにつれて、それは両親が小さい時からいいものを食べさせていたおかげだと農家の大人たちから諭され、自分から遠ざけていた自分の家族との関係性を見直し始めるきっかけになったりするのだ。

 

 特に物語後半からの主人公の成長と、人生を賭けて打ち込んでいくことになる、あるものごとに関しては社会人ながら感服いたしました。。。

 

 私の中では、こどもが大きくなったら若いうちに読ませたいマンガである。

 

 

面白かった小説②「白夜行」

東野圭吾作品で特に好きな本は、「秘密」と「白夜行」である。

 

「秘密」はファンタジーでドラマ的な内容なので、東野圭吾ミステリーでいえば「白夜行」が一番だ。「流星の絆」も面白いんだけどね。「容疑者X」は映画が良すぎて原作をまだ読んでない。そのうち読みたいと思っている。

 

この本の面白いところは、主要人物ふたりの男女の話がメインのストーリーなのに、ふたりの視点からは何も語られず、ふたりに関わった周りの登場人物の視点で少しずつ話が進んでいくところである。

 

過去に起きた殺人事件と、そのふたりは確実に関係しているはずなのに、殺人動機やふたり同士の接点が見つけられない。性格、境遇が正反対のふたりがストーリーの中で直接接触している場面もない。ふたりに関わった人たちは、つぎつぎと不幸なことが身の回りで起こり始める。未解決のその殺人事件を担当した刑事は、刑事の勘で当時幼かったふたりに何か違和感を感じたまま、数年をかけて引き続き捜査を行っていくが。。。

 

過去の事件の話を基盤として、ふたりの身の回りで起こる出来事が周りの人の視点で描写され、そして終盤にむけて各出来事が線で結ばれ、事件の真相も併せて明らかになっていく展開がすごい爽快である。

 

東野圭吾の文庫本が並んでいるコーナーの中でも目を引くくらい分厚いんだけど、読み始めたらすらすら読める。当時中学生の私でも読み切れたくらいだ。

 

男が軽犯罪を犯し続け、怪しい社会に踏み入れていく”影”として描写される中で、女が煌びやかで幸せな社会生活を手に入れていく”光”となる対比も、みごと後半でうまく味をだしている。読後感が満足できる一冊なのでおすすめしたい。

 

 

面白かった映画①「クルエラ」

ディズニー映画は好きだ。小さい頃から家にシンデレラやピーターパン、ライオンキングなどの映画のVHSがあって、よく観ていた。

 

一般的にはひとくくりのジャンルとしてまとめられそうなディズニー映画だけど、コンプライアンスやポリコレの考慮が一般的になってきた現代において、新しい時代の映画としての在り方を問うような”実験的な”作品が多くなっていると思う。そんな”実験的な”映画の数々の中には、一口に「ディズニーだから」で終わらせてしまうのはもったいない映画が多いので、最近観た中で面白かったディズニー映画、「クルエラ」を紹介させていただこう。

 

ご存じの人はご存じ、101匹わんちゃんのメインヴィランである。(ヴィランって言葉は昔から日本でメジャーなのか?個人的にはヒロアカと一緒に広まったと思っている。)とりあえず、クルエラはダルメシアンの毛皮でコートが作りたくてたまらない。子どもたちを誘拐されたダルメシアンのポンゴとパディータ、町の動物たちと、クルエラ率いるジャスパーとホーレスの悪党3人衆とのドタバタ劇が101匹わんちゃん本編での主なストーリーラインだ。

 

「クルエラ」はそんな悪党デザイナークルエラがどのように誕生したかを描いたスペクタクル映画、、、、、なのだけれど、古き良き名作ディズニーアニメーションとその実写化には毎回多少異なる設定がある。

 

ディズニーにあまり触れたことが無い人たちはあまり感じられる機会が少ないかもしれないが、ほとんどのディズニー実写映画化は、アレンジされている設定があるものが多いのだ。その設定によって登場人物の行く末が変わったり、人柄のイメージが大きく変わったりする。その設定によってディズニーファンの感想も大きく変わってしまうから、古き良きディズニーアニメーションをこよなく愛するディープなディズニーファンが、ディズニーに裏切られたと作品をボロカスに叩いたりもするのだ。

 

リトルマーメイドの実写化主人公しかり、賛否両論ある昨今の話題ではあるが、個人的にはエンターテインメント界の世界的リーダーとして世の中の創作作品を率いているディズニーの作成した、過去の単純な勧善懲悪やプリンス&プリンセスで終わらないような新しい方向の作品が増えてきて面白いと思っている。

 

この「クルエラ」も上記の話にもれず、設定を後付けして盛りに盛っている。ジャスパーとホーレスなんかアニメ本編では命令されたらテレビ見終わった片手間に犬を殺すような悪党だったのに、「クルエラ」では3人組を家族として守る優しい兄貴みたいになっている。悪党3人とも動物をかわいがる描写もあったりする。

 

そんな感じにツッコミどころは多いのだが、映画単体としてみると結構面白かった。

時代背景は1970年のパリのファッションブーム。1900年代後半のロックなどのヒット曲を筆頭に、小粋なテンポでファッション×ミュージックを融合していく描写は、どこか懐かしいけど煌びやかできれいだった。

 

ストーリー的には普通だけど、そんな感じに楽しい映画となっているので、ディズニー映画を期待して観るのももったいないし、「なんだ、ディズニー映画か」で敬遠するのももったいないと思った。そんな人たちもまっさらな気持ちで観てみてはどうか。

映画ってやっぱいいものですね~ってなるから。

 

面白かったマンガ①「結界師」

私がちょうど小学生のころに月曜夜でアニメをやっていた。たしか犬夜叉のアニメとかと同じ時間帯を引き継いだのかな?

 

それにしても最後がどうなったのかを知らない、ということで最寄りのGEO様で読んでない最後の章の部分借りてきました。完結作品は一気読みするのが吉。

 

 

簡単なあらすじはこんな感じ。

地元の学校の土地が妖と呼ばれる怪異を引き寄せ、怪異を強化させてしまう。そんな中、その地区に住まう二つの家系は代々その土地に寄り付く妖を結界術をもちいて夜な夜な処理することを家業としていたが、その正統継承者となる中学生の墨村良守と高校生の雪村時音は次第に大きな陰謀に巻き込まれていく。

 

 

サンデーで当時連載されていて、上記のような王道の少年漫画かと思いきや、物語後半に向かってダークな雰囲気でストーリーが展開されていくのが個人的に魅力的だった。

全体を通して「生まれと才能が全て」と言わんばかりの理不尽な境遇の人がたくさんでてきて、なんか読んでて悲しくなる。例えば、主人公の兄ちゃんは優秀な人間で、能力者の組織でも相当の地位についていて、主人公はいつも飄々としているそんな兄ちゃんを食えないやつだと思っている。その反面兄ちゃんは政党継承者に選ばれた主人公の立場や、内に秘めた計り知れない才能をどこか羨望しているふしがあるんだよね。

 

あと、一つ一つの章でスカッとした終わり方はあんまりなかった気がするね(笑)

後ろ髪を引かれるというか、わだかまりを残すというか。そんな展開が続いていたから「爽快!!」みたいな展開は少なかった。作者がそういう話が好きなんだろうな。

 

だから読んだ後の感想としては、ダークファンタジーなジャンルに入るんじゃないかなと思った。

鬱々とした内容な感じの感想を書き綴ってしまったけど、バトルも展開もアツいマンガです。ぜひたくさんの人に読んでもらいたい。

 

 

面白かった小説①「アルジャーノンに花束を」

白いマウス・ハツカネズミのイラスト

 

有名な作品である。

アルジャーノンに花束を」作者:ダニエル・キイス

1959年のアメリカの小説。私が読んだのは高校生の時なので、

およそ10年前。それでも現代でも色あせない作品だ。

 

当時、日本の作家さんの小説メインに読んでいたので、逆に新鮮な小説だった。

日本人作家の小説と比べると、海外の小説は翻訳のくせもあって説明口調な文章になりがちなイメージだった。この小説は、そんな海外原作の小説の中でも実験的な小説で、うまれつき知能が低いチャーリー・ゴードンの手記で全編話が進んでいく。

 

もともとの英語の原文もつづりや文法を間違っているように書いていたんだろう、日本語翻訳でも文章は間違えだらけで、読みにくい日本語で話が進んでいく。

 

チャーリーは生まれつき知的障害を持ち、施設に通い、パン屋で働きながら暮らしている若者だ。

施設のみんなは優しく接してくれるし、パン屋の同僚に馬鹿にされても気が付かない。そんななか、生まれつき低い知能を向上させる手術が確立される。

知能を向上させるマウス実験はすでに成功しており、人間の被験者としてチャーリーに手術を受けないか施設の先生から打診がくる。

みんなと少し違うことを感じていたチャーリーは手術を受け、見事成功。その後みるみるうちに知能が向上し、周りを驚かせていくが・・・

 

知能が良くなるにつれてチャーリーの言葉をもとにした本文は読みやすくなっていき、ストーリーの中でのチャーリーをみる周りの目も、チャーリーの立場もみるみる変わっていく。そのうちチャーリーは、周りよりも知能が高くなり、人生で初めて感じる孤独や、不相応な幼いままの感情に悩まされていく。

 

頭が悪いチャーリーが頭が良くなることで問題は解決されるだけではなく、むしろ思い悩んでいく皮肉がきいてて、読んでていろいろ考えさせられる話だった。

 

哲学的な要素や人間模様も描写されており、最後にはほろりとくる。

今でも大好きな小説のひとつなので、ぜひおすすめしたい。